雨を切る/理来
 
雨を切る
水面のふたえの眼差しを
かたちとどめるまで震わせる
水上に口寄せる雲のとうげ
向こうは見えず雨惑い
みなもとに降る縦糸の舟が
あまさず小道を払いおとし
南の淵から流れる北へ
イタチの相貌を走らせる

両腕を広げると
落下する、わたしも落下する
雨を切る
わたしも切りつけられる
いたみをつなぐ気配とわたし
手を取り合って橋渡し
この不親切な舞踏にも慣れてきた
わずかずつ、聞こえるか
あふれて全体を伝うもの、揺り起こすもの

訪ね歩いたのは
背後から投げかけられたすべて
わたしに追いつき、それは一致し
肩幅の膜から浸透した
わずかずつ、聞こえるか、意志は目を覚ましているか
わたしはいま微笑みかけている
道の途中にあるこの冷たさも掌のめぐりにそって重なる
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