街のにおいを少しだけ嗅ぐ/ホロウ・シカエルボク
 
号を渡って、特別用事もないがコンビニを覗く。まだ時間が早いせいか、あまり人気はない。オカルト雑誌とゴシップ誌をしばらく立ち読みして、なにも買わずに出た。まだ昼前だというのに学生の姿が目立つ、試験期間中かなにかだろうか?学生のスケジュールなんかにもうどんなリアルも感じることはない。ほんのわずかな距離を歩いただけなのに、もう身体が冷え切っている。ウンザリする。そして、寒波のせいに出来ることに少し安心する。少なくとも今日という日にはそういう拠り所がある。正しい、正しくないに関わらず、理由というのはあるにこしたことはないのさ。家の鍵を取り出して玄関を開ける。朝日以外はよく当たるこの家。少し身体を伸ばす。なにかを始めなければならないことは判っている。けれどそのためには、もう少し悪くない気分とやらを味わっておかなければならないのだ。


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