鏡の中の猫/……とある蛙
っと振り返ってタンスを見ても
やはりそこに彼女はいない。
またまた、鏡を覗き込む
直ぐ鏡台脇のテレビの横
画面に泳ぐ魚を覗き込み。
前脚伸ばして 魚を捕ろうと
前脚を振っても空振り空振り
少し小首を傾げながら
じっと自分の肉球を覗き込む
やはりとテレビ台に顔を向けると
そこに彼女はもういない。
またまた、鏡を覗き込む
突然
鏡の中から彼女が飛び出した
膝の上に両前脚をトンと載せ
ニャーと鳴いて餌を欲しがる
ずっとこの部屋にいたのだろうか
鏡の中にいたのだろうか
何とも奇妙な具合で
そのままおやつの削り節
彼女のボウルに入れたのだが
うたた寝をした憶えはない
なにか不思議な午後だった。
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