ブルーアウト/月見里司
 
/ローレライ

海に沈む夢を繰り返し見る。
何もない場所で
干したままの上着と同じように揺らめきながら
人魚が遠くで歌っている。

(ここは静か、とむらいの火はとおく)

海は決まって夜で、
月の光がだんだんと細くなっていって
水面が見えなくなって、それでも底に着かないまま
歌声は遠く
しかし聴こえつづけて

(夜は青、水は青、月の光は青)

目が開く頃には、いつも枕が湿っていて
点けっぱなしの空調が、
かすかに唸り

ここも静かだ、と呟いても
音になる前に消える。


/フューネラル

叔父の葬式へ参列することになった。
喪服に袖を通して、
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