詩人の魂 /服部 剛
 
不器用な自分を忘れようと 
彼はアトリエに入った 

目の前にある石を 
彫刻刀で、削る。 

無心の者となり 
夢中に、削る。  

いつのまにか 
とっぷり日は暮れて 
暗闇の部屋の窓から 
月明かりはそっと射しこみ 

目の前にあった石が 
跡形も無くなった、宙に 
ぼんやりと古書が現れては消え―― 
古の詩人の微笑が現れては消え―― 

目の前には只 
青い炎のひかりが浮いており 
こちらに何か云うように燃えており 
俯いていた彼の頬を 
いつまでも照らしていた 







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