アオミドロ(散文詩)/そらの珊瑚
 
が、幼い私を助手席に載せたまま、何をどう間違ったのか(初心者はいすれにしても何かの拍子にトチ狂うものであるが)車幅ぎりぎりの橋から落ちてしまったこともあるという。今年七十四歳になる母親はそれに懲りずに今も運転しているのだから、いろんな意味で、恐れ入る話である。
 増水した川に子供が落ちて亡くなったと噂が広まったこともあった。橋に腰かけていたのが仇となり、どういう訳か後ろ向きに落ちてしまったという。私はそれを聴いて二度と気軽に橋の縁に腰掛けることを止めた。背もたれのないそれの危うさに心底おびえた。生きている者は、死に対して永遠の初心者である者なのだ。日常はのんきそうに見せて、実は死をその手の内に隠
[次のページ]
[グループ]
戻る   Point(7)