塔/……とある蛙
 
だ往時の歴史を語り、
二十面相の住み処となって
不吉な前兆をずっと見つめる見張塔

イザヤ書とは無関係だが
降り注ぐ放射能のその中で
頑丈なコンクリートに囲まれて
何を守るのか給水塔
大正から昭和をまるのまま生きて
何を守るのか給水塔
厚いコンクリートの給水塔

その給水塔の遙か皇居を挟み反対側
下町の地に屹立する六三四メートルのタワー
天に届く回廊か
それとも不吉な予兆の見張塔か
でも高いところが好きなので
きっと大枚はたいて昇っていく

O君
君もきっとこのタワーに昇るのだろうね。
昇ってまた大声で呼ぶのだろうね
「お〜い S」
って



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