ロストワールド/そらの珊瑚
 
手のひらの水路は
かつては
とうとうと水を運び
小舟の上では
とれたての魚が 飛び跳ねていた

みどりの髪の豊かにして
甘やかな香りに
包まれて
たわわに果実の実る季節
口を寄せれば恋の味がした

まつげの淵を
すべりおり
こぼれおちた涙は
光り輝く真珠となった
宝石コレクターの引き出しの中で

君の手にありあまるほどだった
両の乳房は
今は しぼんだ風船のごとく
あたしの空の端っこで
ますます軽い

紅茶に浸したマドレーヌを
口にふくめば
失われた世界の
懐かしい味がする
ロストワールド


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