道端で泣いていた人/伊織
 
横たわるその人には目を合わせることをせず、
ただルーチンワークで人々は流れていく。
季節に合わせた花、とりわけ白い花が多く飾られている光景も、
愛でるでもなくただ通りすぎていく。

その人の、写真だけは笑っていた。

父親は言った。
「あいつは、生きるための努力をしなかったんだ」
母親は何も言わず、
棺桶の中の花をちぎっては一人娘の顔を覆い隠すように撒いていた。

その日泣いていたのは、
空ひとりのみであった。
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