帰る(五月雨降られ)/AB(なかほど)
 

古文アレルギーの僕は
中に入る気にもなれず
時間を決めて
隣の戸越公園で噴水を眺めてた
帰り道
戸越銀座の駅が見える頃から
かゆいなと思いながらモゾモゾ
としている僕の顔を見て
君は怪訝そうな顔をしてたが
家具屋の鏡に映った僕の
首筋からプツプツが沸き上がって
顔中に広がろうとしていた
雨上がりの樹木からしたたり落ちる液に
かぶれたんだろう
やわだなあ なんて
あんなに笑うことはなかったじゃないか
君のせいなんだから
それに君の方がずっとやわなのは
知っていたさ
僕よりもずっとやわなのは
と思いながら
戸越銀座の駅で降りた
もう一度公園まで歩いて

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