失語症から/石川敬大
蘇生のイキをするように
そっと虚空に
言葉をはなったとき
言葉はすぐにちりぢりになってきえた
あの日の
あの青空には
二度とであえはしない
わかっているのに
わかっていながら
なんどもなんどでもでかけてゆこうとする
なつかしさにであおうとして
*
いないはずのひとがいた
すわっていた
だまって
あたたかい冬の縁側で日ざしを浴びて
影が
ほそくのびていた
子どもらのわらい声がながれてきた
だれかのくしゃみも
いないはずのひとは
やっぱりそこに
いなかった
朝のマクラがぬれていた
*
せつなさのイキは
灰燼のぬくもりのなかにある
と、だれかが言う
彫琢されてきえずにのこる痛みが
いまも疼くと
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