白象のいた港(掌編小説)/そらの珊瑚
 
 ここは武蔵の国、横浜村。
 黒船が来航してから、港が開かれ、もとは、ただの貧しい漁村が、外国の船が行き交う活気ある港になった。
 昼間、騒々しい音が絶えることなはなく、外国の香辛料の香りが橋桁に染み付き、異人さんが話す外国語が潮風の友のように聞こえてくる、そんな港。
 
 港の朝は早い。ふんどし一丁の人夫たちが、船の積荷をトロッコに載せる。ガラガラと大きな音をたてて滑車が行き交う。転車場では、ガチャンと鉄がぶつかり合う。人夫はぎりぎりのスピードを保ってどれだけ早く荷物を運べるかを競い合っている。
 
 その中でもピカイチの仕事をするのは、新さんだった。僕はその相棒。
 長い鼻を持つ
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