空白の文字/ブロッコリーマン
そのとき彼女は、その文字をすみからすみまで
美しいメロディで埋めつくして
光る吐息にのせることができた
小学校の、材質のよくわからない床を思い出す
まだそこにいるのならわたしは
すべてを思い出している
朝が来たならその記憶はすべてよみがえる
その記憶がよみがえるときが わたしの朝だ
彼女はわたしの全身に書かれた文字を すみからすみまで
美しいメロディで埋めつくしていて
ああ それは冷たい風になって眼球の奥にすべりこむ
それは春だ
かかとが痛くなるほど歩いたあの遠足を思い出す
彼女はまだそこにいて
わたしの記憶はすでに彼女以外を、とらえてなどいない
満たすために呼び起こす記憶が激しい空腹を呼ぶ
そういった種類の情動が朝を遠ざけていく
春を遠ざけていく。
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