【 嘘と男と着信メール 】/泡沫恋歌
わたしの携帯が反応する
男のメールを開いてみたら
それは昨日の嘘を上書きしただけの
無意味な言葉ばかりだった
いつも削除のボタンを押そうとして
結局
消さずに取って置くのだ
嘘 嘘 嘘 すべて嘘なのに――
愛は
与えるものでもなく
奪うものでもなく
ただ信じる心だけで繋がっている
実体のない 不確実なもの
わたしは
真実なんか知りたくない
知った瞬間に
孤独な自分を知ってしまうから
お人好しのままで嗤っていたい
だから
嘘ついてもいいんです
嘘には真実を隠す優しさがあるから
その優しさに縋って わたしは生きていける
――と、きっとそう思う
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