命のための命/そらの珊瑚
「柿の実を全部採ったら だめなんよ」
そう言って
祖母は
せっかく実った柿の実を
いくつか
まばらに残しておくのが常でした
ひとつは
お腹をすかせた小鳥のために
ひとつは
木登り覚えた子猿のために
ひとつは
飢えた時代に
この柿の実で
命をつないだ
幼かった自分のために
ひとつは
太陽に捧げるために
最後のひとつは
地に落ちて
小さな虫が食べることでしょう
そうして
真っ赤に熟れた 柿の実は
土に還って
ふたたびの
新たな命 となることでしょう
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