布讃歌/そらの珊瑚
 
前世はおむつでした
その前は
朝顔を咲かせた藍染の浴衣でした

かすかに覚えているのです
あなたと
一緒に
縁側で線香花火をしましたね
華々しく燃えたあと
ぽたりと火種は落ちて
この世に
これほど美しい命があったのかと
心がふるえたのを
覚えています
あなたのそのふくよかな乳房を
包んだとき
そこに ほのかな愛が生まれたことを
私も密かに知っていました

そのうち
あなたは母となりました
私は糸をほどかれて
おむつになりました
傷つきやすい
水蜜桃のような赤ちゃんのおしりを
包むたび
優しい気持ちになったものです

排泄物を人は汚いと言います
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