【 井戸の中 】/泡沫恋歌
小さな世界の中で
自己満足という
落とし穴に嵌り込んでいた
仄暗い穴の中では
自分の声しか聴こえてこないから
これが世界のすべてだと
信じてきっていた
たぶん
わたしは小さな蛙
井戸の底から太陽を見上げて
その眩しさに
水中深く沈み込んでいく
だって 潮水はしょっぱくて
涙が止まらなくなるから
大きな海には出られない
臆病な蛙は
ぬるま湯みたいな
井戸の中で
ちっちゃな夢だけ抱いて
それに満足していたら
たった一匹で
殿さま蛙になっていた――
戻る 編 削 Point(18)