年明け/……とある蛙
 


湿度の無い風景

明るい日差の中に存在する
明瞭な輪郭をもった影
光量の多さが影に
黒の濃淡を作る

冬の日差を描いた絵画
影は濃淡ではなく
長さを主張する
どこまで行っても途切れない影は
直面する壁に
自分の姿を起立させる

壁が無い風景に
影はだらしなく緩みきり
築地の塀にそって
自分の影と
影のような漆黒の烏の飛翔
奇妙な染みのような風景の出現

夜が突然落ちてくる
冬の黄昏時
カウンターで飲む
燗酒の突き出しの
蛸のから揚を齧りながら
また同じ新年を迎える

何も克服できずに
ため息がでそうになるが
ため息なんて詰まらない、
今年はするまいと我慢したら
目尻から熱い水が滴り落ちる。


※年あらたまり 参拝の列
 今年こそはと 両手を合わせ
 拝む姿が 例年どおり
 変わり映えなし 春景色

戻る   Point(10)