沼に咲く/石田とわ
 


               

               それは夜ごとにうごめくいっぴきの沼でした
               わたしが瞼を閉じるとき闇の中で目を覚ます
               
               昼間みた明るい日ざしも笑いころげた面影も
               すべてを深く飲み込むのです
               布団の中で横たわるのは虚ろな抜け殻でした
               沼はおもいのすべてを喰らい足掻けば足掻くほど
               底なしの深みにはまるのです
               
               わたしを売ったときから巣喰ったのでしょうか
               やがては沼に喰らいつくされ、沼と化すのでしょうか
               
               それでも夢にみるのです
               いつかこの沼に一輪の花が咲くことを
               沼底でひっそりと咲く花を





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