霊視体験/アラガイs
 
る弟を見つけた。それとなく問いかけてみた。予感したとおりあれから母親の家には行っていないと言う 。
では、わたしが見た男の気配とは何だったのだろう…。
…台所へ向かう廊下には、仕事の合間につまみ食いをしにやって来る死んだ兄の姿がいまでも目に焼き付いている。そして同じ年に亡くなった父親の記憶…。
そういえば兄の娘の子も同じようなものを廊下で見たといい。昔、妹が白い得体の知れないものを見たと恐る恐る語ったことを思い出してもいた。横顔を通りすぎたのは、単に幻影ではなかったと確信している。決して錯覚ではないはずだ
あのとき、仏前にはわたしと猫が居て洗濯物を選り分けていた。そして何かを見た。今でもそう確信している。
しかし、奇妙なことに振り返ろとすればするほど、何故だか思い出せない 。
あのとき漠然と通りすぎた気配だけが頭に残り、実際自分が何をしていたのかはっきりと蘇ってこないのは何故だろう…
不思議と恐怖感さえもないのだ 。








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