プラントの梯子/甲斐マイク
月のきれいな夜の森に
すすけたランプがひとつあって
マルグリットはその蝋燭の灯で
読書するのが好きだった
手帖の裏側から
ロオリエの葉が匂っている、ミニマリズム
微妙な引力
黒ぶちの眼鏡をして
めんどくさい
あの華奢なドアボオイの鼻声に染まった記憶を
注意深くはぎとるように
美事な本を
ひらいて閉じる
あいたいよ あいたいよ
もう顔もみたくない
口先だけでなぐさめて
遊星ぐるりに消えてなくなれ
月のきれいな夜の森に
すすけたランプがひとつあって
マルグリットはその蝋燭の灯に
19歳の迷夢を見ている
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