夢の階段 /服部 剛
何もない所に
一つのドアと
見知らぬ場所へ昇ってゆく
階段があった
昔見た夢で
ドアの向こうの階段に
どう抗っても行けない所で
ぱっと目が覚めたが
僕はこれまでの生の歩みで
何度も不思議な階段を
昇ってきたのだ
自分でも、知らないうちに
ほら、ふりかえった背後に
伸びている
長い長い階段を下ってゆけば
開いたドアの向こうから
あの日別れを告げた
かけがえのない人々が
全く同じ年齢と姿で
これから旅に出る僕に
無数の手を
いっせいに、ふっている
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