ファースト・エンカウンター/板谷みきょう
 
藤だった。
プラトニックとバイオレンスが、
ぶらんこに乗って大きく漕げば漕ぐ程に、
接点は瞬時に過ぎてしまう。
愛のある肉体関係と、
欲望に支配された愛のない肉体関係のある事に戸惑い続けていた。
肉体を欲するが為に愛を囁くのか、
愛の結果として肉体的交わりが生まれるのか。
その頃の僕は、
ネオン街で働いていた様々な水商売のホステス嬢との付き合いの中で、
悩みの答えを探していた。
そうして、精神的な愛とは異質な肉体の存在と、
技巧を知らされた僕は言葉を失って行ったのだった。

『愛さえあれば言葉はいらない。』と言われ、
『言葉のない関係には愛は生まれない。』事を教わった
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