ファースト・エンカウンター/板谷みきょう
切なさが
いとおしさを、やる瀬なさが慈しみを…。
たくさんの心の動きが、
心を豊かにしてくれるはずだという信念のなかで
『最後に一人だけを選びなさい。』と言われながら、
二人を得ようとする僕の罪に、
いつ天罰が下されるのだろう。
脅えながら、けがれた僕は答えを待っている。
相手からの返事をそれでも待っている。
現実感の遠のきを感じながら、
それでも死なないで、
中途半端な愛にぶら下がりながら、
哀しみに泣きながらじっと耐える事が、
格好良い事だと虚勢を張って暮らしている。
強く結ばれるはずだったのに、
最後は一人残されてぶざまな笑い者として、
道化者の仮面だけを被り続けるしかないのかも知れない。
生きてる屍と呼ばれ、太宰にもなれずに
生きるしかない僕の暮らし。
その全ての始まりは、うるさい位の
ジャズ喫茶での偶然の出逢いからだったんだ。
(一応の脱)
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