ファースト・エンカウンター/板谷みきょう
品売り場を幾つも回って、
店員さんから耳にたこが出来る程、厭と言うほど
『今年の流行色はなにがし。』と蘊蓄を聞かされながら、
何日もかけて歩く。
ひとりよがりで、決して相手に伝わらない。
無駄で愚かな行為に
純粋な愛を感じる事しか出来ない僕がそこにいる。
そして、全ての想いの結晶として選んだ口紅に、
無力で勝手な愛を託すしかないと、諦めてしまう僕がいる。
相手の彼女自身がどう感じて何を思おうと、
仕方ないと諦めてしまう僕の愚かさ。
それも一番大切な三月十四日という日から、
どんどんとかけ離れて行く中で、
「このまま逢わない方が彼女にとって幸せなのかも知れない。
[次のページ]
戻る 編 削 Point(1)