空白にする/りこ
 
ノートに身を投げましては
冬の景色になみだを浮かべる
あなたの口に添えた言葉を
死なせてしまった

息を止めて泳ぐ生活のなかで
このわたしに
はじめての名前がつきました

やわらかい部分に穴があいて
沁みこんでくる
あなたの背中に漂う温度を
感じてしまった

呼吸をする入り口が
不必要な心もち
ノートに積もるだけなら
心地よいくるしみだったのに

したためるには重すぎた
振り向いてしまうには早すぎた
それなのに
どうしてもあなただった
わたしの
打ち明け話を空白にする

それでも
わたしの行き届かない空気の中で
平然と呼吸をしているのが
ずいぶん憎い
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