わたしは咲く/あ。
咲き方がわからなかったので
見渡そうと思った
女はホースで庭に水をまく
小さく集まった緑色はより濃厚になり
葉の先からぽたりと落ちる
はねっかえるのは強すぎる太陽
夏だ。
男は半袖のシャツにカーディガンを羽織る
駅に向かう途中で腕をまくろうとし
冷たくなった風にあおられて再び袖をおろす
ぐらぐらと揺れるすすきの穂みたいに
秋だ。
子どもは積もった雪に手を伸ばし
思いがけない冷たさに驚いてひっこめる
かさかさと赤くなった頬に
白くのぼる吐息
冬だ。
家族は並んで歩いている
川沿いに植えられた桜の木は
それぞれが競うように花びらを散らし
晴れた日の、雨のような
春だ。
目に見える先にはいつも
誰かがいて
咲いていたり
散っていたり
時には歌い
時にはささやき
めぐりめぐって
また、誰かが咲く
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