43ページ、つまり44ページ目/はるな
た読みかけの小説。
いったい何が重要なんだろう。
ディティール。それは、じゃあこの生活のいったいどの部分なんだろう。かなしかったのは、納得できてしまったからだ。ストーリーよりも、ディティールが残っていく、と。生活においてさえ。
夫は、いまやわたしの生活のすべてになってしまった―すべて、にディティールなどない―。もともとわたしに生活などなかったのだし。はがれかけていたわたしの中身は、いまやすっかりべつべつのものになって、お互いに顔を見あわせている。それは、思っていたよりもずっと穏やかな心地だった。不安を生活に持ち込まなくてすむから。生活に、思い出は必要ないのかもしれない。夫といるときには、何の思い出も、思い出す必要をかんじない。でもあるいは―この生活がなにかの拍子に失われたら―とも思うのだけれど、それでもやっぱり生活と思い出はかけ離れたままだろう。破りとられた小説のページのように、そこに何が書かれていたか、思い出せないまま、破りとられたこともわからないまま、本棚に並べられるだろう。
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