43ページ、つまり44ページ目/はるな
はなくて、木漏れ日の光の具合とか、街の喧騒とか、そういうディティールが引っかかって残っていくのだと。
別れ話の内容よりも燃え尽きていく煙草のかたちとか、訪れた場所の数でなくそこでみた埃をかぶったへんな土産物とか、交わした口づけの長さでなく、耳たぶにあたる日差しとか。
失われていく温度がふとした瞬間に強く残ってイメージになる。それがわたしのある部分―すごく重要な部分―を形作っていて、そして、二度と触れることはできない。思い出すことはできても。
このノルウェイの森は、たぶん、わたしにとって生活みたいなものだ。破りとられたページの内容が気になるのなら、本屋に行けばいいのだし、それはかんたんなこ
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