船に乗る日 /服部 剛
 
妻の運転する車に乗り 
CDの再生ボタンを押す 

「状況はどうだい、居ない君に尋ねる」 

新たなる日々が、始まろうとしていた。 
3年前、自ら世を去った友を思い出していた。 

この歌をイヤホンで聞きながら 
朝の交差点を渡る僕の頬には、あの日 
とめどない涙が、溢れていた 

「強く手を振ってあの日の背中に 
 サヨナラを告げる現在地 
 動き出すコンパス 
 さぁ行こうかロストマン   」 

異動の決まった職場には 
暗闇から這い上がって復帰した 
僕の新たな、友がいた 

「これが僕の望んだ世界だ 
 そして今も歩き続ける 
 不器用な旅路
[次のページ]
戻る   Point(5)