船に乗る日 /服部 剛
妻の運転する車に乗り
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「状況はどうだい、居ない君に尋ねる」
新たなる日々が、始まろうとしていた。
3年前、自ら世を去った友を思い出していた。
この歌をイヤホンで聞きながら
朝の交差点を渡る僕の頬には、あの日
とめどない涙が、溢れていた
「強く手を振ってあの日の背中に
サヨナラを告げる現在地
動き出すコンパス
さぁ行こうかロストマン 」
異動の決まった職場には
暗闇から這い上がって復帰した
僕の新たな、友がいた
「これが僕の望んだ世界だ
そして今も歩き続ける
不器用な旅路
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