不思議な声ー法然と親鸞展にてー /
服部 剛
上野の美術館内で
ガラスの内側に坐る法然上人は
時を越えて歩いて来た
旅人の私を待っていた
少し猫背に身を屈め
指のすき間から数珠を垂らし
700年前に描かれた
色の薄れた絵の中にいる
法然上人と目があう時
心の救いを密かに求めてやって来た
21世紀の旅人達の頭上から
人生の旅を労(ねぎら)う不思議な声が
館内の何処からか囁いて
心の鏡に木霊(こだま)した
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