絵の世界へ /服部 剛
今日、天は私に
新たなる日々の舞台を与えた
「12月から服部君がうちに来ます」
会議で所長は皆に、言った
「これからの現場をつくる1人になりたいです」
密かな決意で、あいさつをした
ひと時、暖かい拍手に包まれながら
私は武骨に、頭を下げた。
帰りの下駄箱で
私は礼を言いたかったが、何故か言葉が出なかった
所長も何か言いたげだったが、言葉を胸にしまっていた
今迄道草をしていた10数年は
今日へと至る
長い回り道であった
これから幕を開ける
舞台の上で
私は私という役を演じるだろう
日常の素朴な場面が
一枚の絵画に生まれ変わるように
目の前にいる隣人に
私は自らをまっすぐ捧げる――
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