涙の泉 /
服部 剛
生まれたばかりの娘が
心臓を手術して
暗闇に頭を抱える父がいる
夫と別れた後
アパート暮らしで
幼い息子達を必死で育てる母がいる
人はそれぞれ何気ない顔で
日々を過ごしながら
仮面を外せば
胸底にひとつの
碧(あお)い泉が湧いている
それぞれの重荷を負い
この坂道を歩むほど
湧き出ずる不思議な泉よ
彼等はきっと、互いの瞳をみつめる時
胸底の泉の水がひかるだろう
密かに反射しあう
涙のように
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