昼顔/根岸 薫
爪は残る
ひとはいない
しめった沈黙をやぶるとき
いつも声が漏れている
いつも雨が降っている
河になる 河になるA
(ひとのこえきこゆれど)
(さむざむとしつつ)
(暮れゆくみどりの雲)
(雲の切れ間)
(わたの音(ね)となり)
(続けざま)
(とこしえに)
『知りたいのなら教えてあげましょうあなたはすでに道をあるいているのです大きな新宿にはやくいきなさいおもうまもなくはっせられていくでしょう今日の時刻をこまかくわけるのも良いでしょうそしてもうあなたの声をだれもきいてはいないでしょう』
少女に
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