ロマネスクの果て/済谷川蛍
生が鋭い感性の持ち主であることは認めても、学習能力のほうは全然駄目であり、自分たちの本来の生業である研究分野に参加出来るような逸材ではなく、卒業のときが縁の切れ目だと悟っていただろう。
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大学2年生になったとき、僕は1学年の必修科目である国語を試験を寝過ごしたせいで落としていたので、新入生とともに学ぶこととなった。その最初の授業で、僕は野村くんに出逢った。野村くんは一言で言えば名画のように洗練された少年だった。僕はこの小公子との出逢いに感激し、さっそく野村くんの席から2つ離れた位置に座った。そして近くで野村くんの顔をのぞいた。すると野村くんが何げに僕のほうを見た。僕はあわてて顔を
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