ねずみ/
根岸 薫
濃縮されかけ
広かった
集合のあとのゆうべ
くらむ
景色と
寒さのなかに
伸びる指先の
ひどく ながい
影の はやくとどけ
のりものにのるから
てのひらの
離れないと
しるしも
赤いままで
汗ばみ
一月のつめたい夜のあいだ
そのために
ひかる両の目
安全で
とても賢い
ねずみの息と
冷えた手足
が
上着と
ドアをくぐる
来るために来た
今以上
このちいさくて
うれしがる
ふるえるからだが
おちる場所など
ほかにどこにもないのだからと
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