染まれ、落日よ/マーブル
 
あの落日から二週間が過ぎようとしていた。
世界は赤黒く終わってゆく気がする。
生まれたての純潔な血液
赤子の産声
母の微笑みはあの
深いオレンジに似ている
全てが許されたような
顔つきで空は滲み出る
月のまなざしの傍らで
僕は帰心の唄を
追い駆けていたんだ



俄雨に日焼けした肌が濡れて、剥がれきった太陽は
無性に冷たく辺りを渇かしている。唸りをあげるような入道雲にアスファルト。存在するもの全てが浮き彫りにされて、色鮮やかに影や臭いや記憶を証明していた。


僕は夕刻になると、時間が許される限り、夕陽を眺めていたかった。慈悲深い光の陰りとか、雲の少し黒みがかる
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