日々の粒/木屋 亞万
 
電の夜に僕らは止まらない朝焼けるまで闇に溶け合う


いつぞやの種が育ちいつのまにか種を落とすまたひとつ芽が出る


髪の毛がひとつ残らずユキヤナギそれが散るまで君は死なない


カチカチに凝り固まったかなしみをコトコト言葉の炎で煮込む


流れ出る涙は止めずに好きなだけ吐き出せばいい空になるまで


花髪の少女と空眼の男の子 夜に遊べる昼がみる夢


吹く風のやさしさで摘む花びらを眠れる鳥の元へ贈ろう


太陽は動いていない太陽を回したくって地球が回る


青空は誰の力も借りないで高い所で青々とする


八百長を許さぬ神は八百万ひとり相撲は比喩ではないと


ごろごろと腹が鳴るのを聞いたならおなかの中の猫はご機嫌


人間が植えた野菜を人間じゃないのが喰うと怒る人間


臆病な男は雪を知らぬまま温かくなる時を待ってる


「正月はどこか饂飩に似ている」と胡乱な奴がほざいてやがる


[グループ]
戻る   Point(3)