どれもすべてたったひとつの生/ホロウ・シカエルボク
しむものだ、そんな場所から生み出されたものこそに震わされてきた。言い訳をしなければならないのなら、生きるな。すべての項目にそう書いてあったよ。死、と再生。懐かしいフレーズだ。どちらかが良くてどちらかが悪いとか、対極にあるものだとか、寝惚けたことを行ってられる歳じゃないさ、どれもすべてたったひとつの生だ。夜が更けると月明りは明度を増す。夜に蠢くものたちはその仕組みを知っている。軋んだ脊髄の歪みを確かめながら、ようやく眠りの端っこを捕まえる。その眠りは断続的で、付随する夢はショート・フィルムの様にころころと風景を変化させて、まるで眠りの間に幾つもの選択肢をドブに捨ててきたような気分になる。毎日同じことさ。いくつもの夢が生み出され、そのほとんどが忘れ去られる。人生は忘れられたものの塊で出来ているんだ。
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