どれもすべてたったひとつの生/ホロウ・シカエルボク
 
酒の肴だ。長く目を閉じていたがやはり眠ることは出来なかった。すべてを遮断出来る窓があればそれが一番いい。コミュニケーションの売女になってそこいら中にどうでもいい相槌を撒き散らすなんてごめんだね。倫理や常識、理性や道義だけでは測りきれないものが人間の本質さ。人間らしさというプログラムに踊らされる機械になどなりたくはない。時々思うんだ、生に寄り添ってくる苦しみを、楽しんでいるような気がするってさ。血液をざわめかせるそれを楽しんでいるような気がするって。いつか傷を受けながら馬鹿笑いすることがあるかもしれない、そのときにはさぞかし愉快な詩が出来あがることだろうよ。先へ行こうとするものは誰だって足掻き苦しむ
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