言葉の粒/そよ風
風が冷たくなってきた。
クリスマスも近いな。
電飾された家々の
そのむき出しのコードが日本らしくて好きだ。
足早に駅にむかう道、コートの襟を立てる。
何処からきたのか
スーッと北風が吹いた時
私の中にある言葉の粒が弾けた。
プチッ。
その言葉の粒は、熱をもち私の体を刺激する。
まるで、耳もとで囁くように。
その湿度が、圧倒的な力で時間や空間を歪ませる。
あまいあまい
言葉の粒。
誰かが忘れて行った。
言葉の粒。
スーッと吹いた北風で
私はバラバラ死体のように、散らばって、
あまい言葉の粒だけを、ひたすら舐め回す。
スーッと北風が吹いた時
ふと、空しくなり
散らばった体を拾い集める。
「今日は寒いな。」
また、襟を立てて駅にむかう。
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