バーについての記憶/日雇いくん◆hiyatQ6h0c
てくる店のような、わけのわからない瓶がこれみよがしに並んでいるわけでもなく、向う側に十本ほど、天井近くにちんまりと、バーボンなどが置かれていた。マッカランらしき白い紙の円筒が妙に目立つ。
すぐ横にはキッチンがあったが、その上に、客に見えるように並べてある瓶も、たぶん大衆的なものだった。全部を知っているわけではなかったが、デザインを見ると、それほどの高級酒は見当たらなかった。
マスターも、無駄なことは言わない職人肌だった。
店内には、ウッドベースの利いたいかにもなジャズが、店に似つかわしいとは思えないテレビのバラエティ番組の音声に混じって、BGM然と流れていた。テレビとかいらねえだろうと
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