コンピューター、及びコーヒー、そしてタオルハンカチ/はるな
 
ずっと良い。
とはいえ夫はタオルハンカチを毎日使う。ハンカチを用意しても持っていかないのだ。タオルハンカチがへたってしまうとそれを雑巾にまわす。そのときに私ははじめてタオルハンカチの良さを感じるのだ。あれは、ちょっとした拭き掃除には使いやすいサイズなのだ。薄くて水拭きの際にも絞りやすいし。もう本来の役目を終えた布なので、気兼ねなく捨てられるということもある。
だけど、いまや手の中で油や埃を吸って薄灰色になった布切れが、かつては夫の頬や首筋を拭っていたのかと考えると、うすら寒い気持ちが胸を吹き抜ける。



恋をして季節が廻ってしまった。たくさんの物事をためしてみたけれど、どれもだめだった。どれもだめだったのだ。何をしても気持ちは遠くへ行かれなかった。そのうちに、根が生えてしまうだろう。


一秒に一京回の計算をするコンピューターは孤独だろうか?
一京分の一秒とその次の一京分の一秒にはどれほどの隙間があるのだろう?

でもその隙間は必ず存在する。

一秒とその次の一秒が手を繋ぐためには、どんな一京分の一の存在も欠けてはならないのだ。



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