顔/かのこ
もう二度と私を殺さないでね
水没させようとする時の崩れ落ちそうな顔
覗き込む鏡には無い
こちら側はいつも見えない
もう二度と私を
穆かな闇に在る白い壁には
ひとがたの陰影が在り
子供になったり老人になったりして
さながらダンスでもしている様で
浮かび上がる
空気がかたどった
目と鼻と口元は笑みを含んで居り
それから時々は輪郭で
こちら側を凝視したりしている
此処にひとは居ない
ただ顔だけが幾つか在り
怖いからと目を瞑る少女は怖いからと
誰かが口付ける時に
見る夢
その顔には確かに在った
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