掌の器 /
服部 剛
生まれた時から
小さい掌は、何も持っていなかった
大人になるにつれて
大きい掌は、様々なものを持つようになった
やがて訪れる夜、掌は「闇」に覆われるだろう
*
ある美術館に飾られた絵で
「魂の抜け殻」になった人が
魚の目で、こちらを視ている
開いた両手を、空にして
*
もし、人が一切を捨てた時
目に映る日常に、残された
ひと・ものに
言葉にならぬ震えが伝わるように
私は両手をそっと、さしだす
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