水音/ballad
水の音に、
さらわれてしまった、
まるで、体は、
どこにもないかのように、
流されて、
くだけた、
服にまとわりついた
みずの、おとだけが、
私をぬらして、
ずっとずぶ濡れだった、
魚達が群れになって、
泡、
指の間を通っていく、
町がずっと遠くにあってよかった、
どこかで誰もが私に挨拶を
しないこの水の中で、
水泡だけが膨らんでいく、
足先で、よかった、
初めて知らない言葉を覚えるように、
温度が水に混じって、
皮膚に明るさをもたらした、
息を吐く、目の前で、
泡が苦しんで死んでいく
ことから目をそむけて、
私は、みずの、おとと、
ぶつかった
はじきだされた、
わたしの足に、
指に、土がまじった
私の体は、町を見失った、
水の音が、まだ、
耳の中で、ぶつかっている、
こまくを叩いて、
やまない、音の中で、
また私の体は、
はじけて飛ぶ、
流れることの無い、
この体は、未だ、
ずぶ濡れのまま、
雨をたどって、
土を体に、
纏い始める、
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