童貞論序説/天野茂典
 
   

   晩秋の光が影法師のようにながくのびて
   本棚の背文字までてらしている
   いまはガス・ファンヒーターも止めて
   漁師のようにきょうの釣果を量っている
   コンビニへバイクで行ってきた詩集を
   読みかけた 海までは遠い
   いまのぼくの体力では 咽喉に草が
   詰まっているのだ 耳鼻咽喉科では治らない
   庭師だろうか 腕前の土木建築家だろうか
   この草を取り除かなくては ぼくの
   似顔絵は描けない 陽は落ちた
   15:26分 ぼくはこれからお・ふ・ろへ入る
   そうしてそこで河童になるのだ 河童の川流れ
   まさか
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