靴音/
かなりや
靴音が遠ざかる
今日も心のどこかで
待っているわたしがいる
鍵をかけずにいなさい
さすれば彼女は……と
根拠のない
地下からの教えが聞こえるのを
深い深い地底からの、
マグマすらこえた、
核の核の
か細いけれど強く、しぶとそうな
それはまるでミシン糸のような
声
鍵をかけずに待ってみる
5分、10分、1時間
またドアが開く
ことはなく
冷たい鍵穴ごしに
遠ざかった靴音を
思い出そうとして
思い出せないでいる
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