ぼくは神島へ行きたかった/天野茂典
 
   




   朝からロックを聴きながら
   詩集を読んでいる
   珈琲も淹れて飲んだ
   タバコを吸いながら
   言葉について考えた
   鎌倉へ行こうかとも考えた
   でもなにもせずに
   ロックを聴いている
   神島もいいなあ
   きょうも晴れて美しい青空だ
   こんな日には海岸へ行って
   生きることの意味を
   肌で感じてきたいものだ
   実朝が建造した材木座海岸の
   幻覚の巨大船
   結局出港できないで
   廃船になったまま置かれていたそうだ
   朝からロックを聴いている
   詩集を読みさしてぼくは
   女子大構内の紅葉を
   座ったままで
   なんとはなしに眺めている

   そうしているうちに
   いちにち一秒年をとってゆくのだと
   わきまえながら・・・


戻る   Point(1)